陸上自衛隊は巨大組織であり、たくさんの乗り物を所持しています。
戦車、装甲車、大型トラック、バイクからジープ、さらにはヘリコプターまで。
これだけ科学技術の結集ともいえる乗り物があるにも関わらず、陸自時代の記憶といえば「走る」と「歩く」が大半。
なぜ陸上自衛隊では、そんなにたくさん走ったり歩いたりするのでしょうか?
それは単なる「根性論」なのか?
今回は、陸自の走ることについて紹介していきますね。
目次
陸上自衛隊の仕事:メインの内容は「足」を鍛える
陸上自衛隊に入ると様々な訓練を受けます。
その中でも、陸自隊員に人気のない地味できつい訓練が以下2つ。
・持続走
・行進訓練
そして人気のない訓練ほど、陸自におけるメインの仕事内容となっているから悲しい・・・。
では「持続走」と「行進訓練」について軽く説明しますね。
持続走
日常生活の中で行われるトレーニング。
自発的にランニングをしたり、部隊でまとまって体育訓練したり、持続走競技会(クロスカントリーマラソン大会)をやったりと。
体ひとつで行うトレーニングですね。とにかく走る。陸自隊員は走りまくると、結構注目される隊員になれます。
行進訓練
「戦闘行動」のひとつ。

フル装備で、さらに重い背嚢(はいのう、リュックのこと)を背負って真夜中に20~40キロ歩く。
陸上自衛官が最も嫌がる訓練のひとつがこれ。とにかくきつく、つらい。
歩き終わっても、とくにこれといった達成感も期待できない・・・。
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日本は自動車社会ですね。1人1台マイカーを持つ時代。なのになんで陸上自衛隊では持続走や行進訓練を重要視するのか。
決して自衛隊が時代遅れの「根性論丸出し」、というわけではないんです。
本当の狙い
車も燃料も何もかもなくなってしまったとしても、陸自隊員は目的地に到達しなくてはならない。最も劣悪な状態でも移動できる「手段」を維持しておくこと。
その最終手段こそが「己の足」なわけです。
そのため陸上自衛隊では常日頃から己の足を鍛えることがメインの仕事。本当に容赦なく・・・。
では、いったいどんな感じで足を鍛える仕事に入っていったのかをお話しましょう。
今回は「持続走」をメインでお話しますね。
問答無用!陸自隊員はみんな走れ!
前期教育で出た課題「200キロ走」
「前期教育」とは、陸上自衛隊に入隊して最初の3ヶ月間行われる自衛官になるための基礎訓練のこと。
この期間に「自発的に目標を達成せよ」という課題が出ました。
200キロ走!
3ヶ月以内に200キロ。元陸上部員なら朝飯前かもしれません。でも普通に暮らしてた高校生が就職と同時に200キロですよ!
しかも訓練時に走る距離は加算されないという・・・。つまり完全に仕事後の自主トレで完走を目指せというお達しだったわけですね。
強制ではありませんでしたが、やっぱり「やる人」と「やらない人」に分かれたのが印象的でしたね。

私はどうだったか?
もちろん200キロ走破しました。ひと月目は体力的に苦しかったですが、段々と慣れていく自分にも気づきました。「継続は力なり」を自分自身で体現していることに驚きでしたね。
3ヶ月間で200キロ走った自信と獲得した体力が、後の自衛隊生活を支えてくれたことはいうまでもありません。
年齢免除一切なし!年1で開催の駐屯地持続走競技会
前期教育より時は流れ、私は陸上自衛隊の「戦闘部隊」に配属となりました。
戦闘部隊とは文字通り、戦闘を専門とする部隊。戦車、大砲、歩兵、戦闘ヘリなどなど。
戦闘部隊は当然のごとく訓練で肉体を酷使します。そして自分の体力が今どれくらいのレベルなのかを知るバロメーターが、年1で開催される駐屯地持続走競技会。
この大会は近くの広大な陸自演習場を使ってクロスカントリーで行われるんですね。(※各駐屯地による)
若い新入隊員から定年間近の隊員まで全員強制参加。怪我をして走れない隊員以外は一切の免除なし!

持続走に向けたトレーニングは、競技会の約3か月前から開始。15時以降は「仕事」として、とにかく走る走る。これでもか!ってくらい。
雨天時は中止かな?って思うでしょ。
雨?んなもん関係ねぇよ!!
そんな感じで全員びしょ濡れになりながら走りまくりです。こうして持続走競技会に向けて鬼のような特訓が続くのでした。
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陸自は走って歩いて走るという意味をご理解いただけたでしょうか?
おかげで40代に入った今でも、ジョギングは趣味として続けています。
さいごに
以上、陸上自衛隊の仕事内容、「走る」についてでした。
どんなにテクノロジーが発達して生活環境や訓練内容が変わっても、陸自隊員にとって「走る」と「歩く」は絶対不変の仕事であり続けるでしょう。
最後に頼れるのは己の足のみ。
これは私たちの人生においても同じことがいえるのではないでしょうか。家族を養い、自立して生きていく。
誰かを頼るのではなく、最終的には自分の力で生きていく。まさに頼れるのは「己」のみなんですね。
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